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ゆたか内科消化器科

地域に根ざした内科クリニックの認知症予防への思い

ゆたか内科消化器科クリニックでは認知症予防に力を入れている。
なぜ内科のクリニックで、認知症予防?自らも内科医師でありながら、認知症予防に奮闘する中島美和子さんが語る思いとは。

自分にしかできないことを

 大学病院勤務当時、介護老人保健施設勤務の依頼を受けた事を契機に介護に携わり始めた中島さん。
介護保険制度のなかった研修医時代は、全員が公平に必要なサービスが受けられるわけではなかったため、寝たきりのままで関節拘縮や褥瘡※1になってしまう人も多かった。

 そんな時代に中島さんの最愛の祖母が認知症を患った。それまではただの被介護者として接していた人も誰かの大切な人なのだということを再認識し、「大事な人の介護ってなんだろう」と強く考え始めた。

 2000年に介護保険制度ができて介護の現場も大きく変わった。介護士という職種が確立し、そのおかげで寝たきりの方々の日常生活レベルの向上が得られ、関節拘縮・褥瘡を形成する者も大幅に減少。「患者さんとどんな関係になってその人の人生の最後をどんなふうに看取るか」が次のテーマになった。

 その思いは、介護の現場から離れて内科医師として働く今、「介護の現場を知っているドクターとして自分にしかできない関わり方があるのではないか」という課題意識に繋がっている。

※1褥瘡(じょくそう):寝たきりなどで体位変換が行えず、体重で圧迫されている部分の血流が滞ることで、皮膚の一部がただれたり、傷ができてしまう症状

健康なままで、ピンピンコロリ

 ゆたか内科消化器科クリニックは地域に根ざし心のこもった医療サービスを目指して2016年に佐賀市に開院された。

 地域の高齢者と関わる中で「今、介護を受けていない人を介護を受ける側に移したくない」という思いが芽生えてきたのは、介護の現場を知っているドクターだからこそだった。

 介護予防活動がしたい。そのためには限られた診察時間だけでなく、もっと患者さんと関われる時間を増やしたい。その思いからできる範囲の活動としてワンコインで受けられる認知症予防の活動を始めた。中島さんの理想の長寿社会は「ピンピンコロリ」。ピンピンしたままコロンと死ぬこと。それはつまり、ベッドの上で管に繋がれて寿命を伸ばすことではなく、健康的に元気に長生きできる寿命を伸ばすということ。高齢者の割合が目に見えて上昇している現代にとっても、ピンピンコロリの考え方で元気な高齢者が増えれば日本そのものに活気が与えられるはずだ。

介護の現場を知っているドクターとして

 クリニックで行われているトレーニングは、訪れた高齢者のバイタルを測定するところから始まる。次に逆利き手による模写を通して脳を活性化させる。全員が集まったところで、中島さんが現代の高齢化社会の現状とこれからについて講話を行う。昔に比べて今の平均寿命はどれくらい伸びたのか。少子高齢化と言われているが、実際割合として高齢者はどのくらい増えているのか。これまでは、一人の高齢者を三人の労働者で支えていたが、これからの時代の高齢者は何人の労働者に支えられていくことになるのか。高齢者は支えられるままの存在でいいのか。

 その場にいた高齢者は真剣な面持ちで話を聞き、メモを取る人もいた。その後、会話しりとり、タブレットを用いた記憶力のトレーニングを行った。その後、昔のことを思い出すゲームでは「駄菓子」をテーマに話が弾み、幼き日に米兵からもらったチョコレートなどの話など、終始、和気藹々とした雰囲気で講座は進められた。

身近な認知症に向き合う

 「人はいずれ老いるし、その老いを受け止めなければならない。それは、いかに死を意識して生きるかと同義であり、その死への不安を取り除くような介護が理なのだ」と中島さんは語る。そのために大事なことは二つ。一つは認知症の方本人が安心して暮らしていける状態にすること。「忘れても安心して暮らしていけるんだ」と伝わるよう、本人の声にしっかりと耳を傾け、寄り添うこと。

 もう一つは家族が認知症の知識をしっかりと持つこと。業務を行うことを辛く感じる介護者もいるが、認知症についての知識を持っているだけで介護者としての負担が減ることもあるのだという。認知症への漠然とした不安が軽減され、誤解も生じにくくなる。介護の現場を知っているドクターとして自分にしかできない関わり方で認知症予防活動に尽力している中島さん。その活動から今後も目が離せない。

サガストEyes 「福祉を志す若者に」

 「とにかく勉強不足で、現場を知らない人が多い」と中島さんは言う。

 介護に関わらず、仕事とは気づき、問題点を提示し、解決していくものなのに、この“気づき”が無い人が多い。ゆたか内科クリニックではこの気付きの部分を鍛えるために清掃を徹底するところから始めた。落ちているゴミに気づけるかどうか。それが仕事に大いに生きてくるのだという。

 中島さんは最後に、「福祉の仕事はやり甲斐のある職である、これからの日本を担い支える側であるという意識を持って座学・実技ともに、頑張って欲しい」と語った。

取材後記  信念と愛情を持った女性

正直、取材に行くまでは、内科のクリニックで内科の医師が認知症予防をしていることが不思議でたまらなかった。大きく医師という分類として考えていたこともあり、認知症の人が増えたり、体を悪くする人が増えるほうが医師にとっては都合が良いのでは?という考えさえ持っていた。だが、今は違う。中島さんは、患者さんを、医師と患者さんとしての距離より近いものとして接していた。そこには、相手をただの患者さんとしてではなく、一人の人間として尊重する中島さんの強い意志と愛があった。これからの日本の将来を見据え、世の中を変えるべく奮闘する中島さんの中にある信念と愛情。私たち福祉を志す者の鑑だと思った。

(文責:西九州大学1年 栃原 磨衣)

会社概要

地域に根ざした「かかりつけ医」

“きつくて辛い検査を楽に受けていただくこと”をコンセプトとし、2016年に開設された内科クリニック。
一般内科、消化器内科のクリニックでありながら、地域に根ざしたかかりつけ医として認知症予防にも力を入れている。「いつまでも元気で長生きできる健康寿命」を延ばすことに着目し、加齢に伴う生活習慣病の管理及び認知症予防に取り組む。
特に認知症予防については「みつおか式脳若トレーニング」を用いたワンコイン講座として「脳わくわく・若返りトレーニング講座」を開講している。iPad(アイパッド)による楽しい認知機能向上講座で、視覚・聴覚及び指先からの刺激で脳を活性化するもの。行政主催の二次予防教室において高い継続率(84%)を誇り、「楽しくつづく」介護予防プログラムとして高い評価を受けている。

 
事業者名 ゆたか内科消化器科
代表者 中島 裕
電話番号 0952-41-7355
本社所在地 佐賀県佐賀市兵庫南1丁目20-15
ホームページ

http://yutakanaika.com/

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