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社会福祉法人天寿会

天寿会流の「働き方改革」で利用者・職員・経営すべてのハッピーを

 介護業界の現場は少子高齢化によりますます過酷さが増している―――そんなイメージを持つ人も少なくないだろう。しかし、天寿会ではこうした時代の流れにただ翻弄されるのではなく、自社ならではの取り組みにより環境改善を図る。その取り組みの背景とキーパーソンの姿を追った。

天寿会流の働き方改革

 特別養護老人ホームやケアハウス、グループホームなど10施設を佐賀県内と福岡市に構える社会福祉法人天寿会。入居施設は天寿荘のほか、福岡市に梅光園、佐賀県玄海町の玄海園の3つの特別養護老人ホームと、福岡市と多久市に有料老人ホーム、その他老人保健施設、ケアハウス、グループホームを経営している。

 天寿会では5K(危険、汚い、きつい、暗い、臭い)等ともいわれる介護職の現場において、IT機器やマシンの活用、そして「職員研究発表会」などによる意見交換などにより独自の働き方改革を実施している。事務局長の武富さんが天寿荘の一員となったのは設立5年目のこと。大学時代は幼児教育を学んだものの当時の求人数は少なく、親戚を通じて紹介されたのがご縁となった。それまでほとんど接点がなかった高齢者福祉について、勤務と介護の勉強を両立させ介護福祉士(国家資格)を取得。現場を10年経験した後、法人本部や24時間体制のホームヘルパーサービスの主任としてマネジメント業務に従事した。

現場の声に向き合う

 武富さんにとって大きなチャレンジとなったのは福岡市中央区に特別養護老人ホーム(全室個室ユニット型)「梅光園」を新設が決まったときだ。施設長として武富さんは、慣れないながらも周辺地域のリサーチや建設業者との打ち合わせを行い、利用者を迎え入れることになった。

 梅光園は、居室も広くクリニックが併設されるなどのサービス・設備を充実させた施設で、主に富裕層をターゲットとして設立された。しかしそれゆえに利用者からは佐賀で経験のなかったような多くの要望が寄せられ、戸惑うことも多かったという。そこで武富さんは利用者及びその家族にアンケート調査を行い、その結果を家族会で包み隠さず公開することにした。そして施設として対応できるものとそうでないものを丁寧に説明したことで、理解が得られコミュニケーションが円滑に行えるようになった。

 入職以来、現場からマネジメント、新施設の管理など様々な役職を経験した武富さん。地域や利用者のニーズに対応しながら変化する組織に柔軟に対応してきた。現在も引き続き、職場環境の改善に力を入れる。佐賀県内及び福岡市内の施設を巡回すると、ちょっと相談があって…と悩みを打ち明ける職員も少なくない。

 「言いやすいんだと思います。顔が見られたからよかったとそれだけ言って帰る人もいるんです」と武富さんは笑う。どの職場においても生じやすい現場とマネジメント側の意識のずれ。両方の立場を経験した武富さんだからこそ寄り添えるものがある。そして、こうした日々利用者と向き合う現場の声は業務の効率化や社内制度の改善を促すきっかけになる。

 その例として夜間勤務時間帯の改善がある。職員には仮眠時間として4時間が確保されていたものの、職員からは休憩できる時間はほとんどないと寄せられた。利用者も寝静まる夜間帯であるから、業務量は限定的であるはず。そこで、1カ月かけて夜間勤務の時間に実施した業務を記録してもらったところ、次に出勤した人の業務にも取り掛かっておくなど、本来夜間勤務中の業務内容を越えたものが習慣化していたことが分かった。本来あるべき業務の形に戻し、職員の負担を減らしたことで夜間勤務時間の短縮も実現できた。

導入ではなく「活用」

 リフター(写真)の活用にも特徴がある。介護の現場では、利用者を抱えたり支えたりするため腰を痛めてしまう人が多く、そうした負担の軽減を目的としてリフターが開発された。ただ、マシンそのものの誕生はそれほど最近のことではなく、他の施設においても導入事例は多数。しかし、マシンを導入しても、多忙な現場で手数を掛ける煩わしさから、ついそのままの腕で利用者を抱えてしまい、蓄積した負荷がやがて業務に支障をきたすほどになることもある。天寿会では、マシンの活用をマニュアル化し徹底して習慣化させる。そのことが長期的に見ても職員・利用者の双方にとってメリットがあると確信しているからだ。前述の夜間勤務の例からも分かるように、慣例ではなく客観的かつ長期的視点を持って効率化をすることで働きやすさを実現し、利用者のケアに専念できるようになるのだ。

「三方よし」であること

 「働き方改革」という言葉を毎日のように目にする昨今、提示される様々な制度の一方で、これまでの慣例や組織の文化にメスを入れ、大きな改革を求めることは難しい。しかし、目指すビジョンをトップと現場で共有することで、その組織独自の働き方改革は可能になるのではないか。天寿会における指針は、まず利用者の方と職員の幸福度を追求すること、その達成のために、ここで紹介してきたような客観的目線の効率化を引き続き推進していく。そして経営が順調であるためには、新しい事業展開も視野にいれる。少子化による生産年齢人口の減少が確実視されることと、財政難による介護保険の抑制傾向が続くと予測されるからだ。利用者、職員、経営に対するまさに「三方よし」を、これからも天寿会では目指していく。

サガストEyes 「外国人にとっても働きやすい環境へ」

 天寿会では平成21年度に東南アジアから2名のEPA介護福祉士候補者を受け入れた。EPA介護福祉士候補者とは、経済連携協定に基づいて日本の介護施設で就労・研修をしながら、日本の介護福祉士資格の取得を目指す方々のことを指す。

 天寿会でも彼らが長く佐賀の地で働けるように、職員で協力しながら日本語や介護スキルの修得をサポートし、2名とも介護福祉士資格の合格を果たすことができたが、結果として1名は母国に帰国し1名は佐賀を離れてしまった。その理由は単純に介護の仕事が過酷だったとか、佐賀に馴染めなかったといったマイナスなものではない。そこには佐賀で長く仕事をしながら家族で暮らすことを考慮し、最終的には離れることを選択したというものであった。その証に、上述の2名との関係は今でも良好という。

 佐賀県では平成30年度から佐賀県介護老人保健施設協会と佐賀県、西九州大学短期大学部が協力して、日本語や介護スキルの修得の他、住宅のサポートをしながら、定着を目指す取組をスタートさせた。2期目となる今回、天寿会も留学生の受け入れが決定している。

 様々な業界における人材不足を受けて、平成29年度より在留資格「介護」の創設や技能実習生制度がスタートした。政府によって門戸が大きく開かれた一方で、個々の自治体や受け入れ機関の支援体制を懸念する声も多い。佐賀における取り組みは、このような受け入れ態勢の充実を組織的に行うものとして注目されている。

取材後記  「働き方改革」について

介護業界については、高齢化や人材不足など、働く現場がますます過酷になっているイメージが強かったのですが、その負担を軽減すべく様々な取組が行われていることを知れたのは今回の大きな収穫になりました。どの職場においても、習慣化されていて刷新が難しくなっていることはあると思います。企業としての理念が共有され、現状をよりよくしていくために声を出しやすいしくみがあるからこそ、内実を伴った効率化が実現できるのだと思いました。

(西九州大学)

会社概要

利用者・職員・経営すべてのハッピーを

 1978年(昭和53年)佐賀県多久市において特別養護老人ホーム天寿荘を開所。その他福岡市及び佐賀県玄海町に入居型の特別養護老人ホーム(すべて全室個室ユニット型)と、福岡市と多久市に有料老人ホーム、その他老人保健施設、ケアハウス、グループホームを経営する。更に在宅サービスのショートステイ、デイサービス・デイケア、ホームヘルプサービスなども提供している。

 職場環境や利用者に対するサービス向上の取り組みを積極的に実施しており、体系化された職員研修の他、年1回実施される職員研究発表会などでスキルアップを図っている。また、アフガン難民援助の一環として始まった植林プロジェクトを支援する「みどり一本」運動に繋げる「みどり一本バザー」を昭和57年より毎年継続。平成8年には募金金額が一千万円を超え国連難民高等弁務官事務所より5回の感謝状を受けている。

事業者名 社会福祉法人天寿会
代表者 理事長 諸隈正剛
電話番号 0952-74-3100
本社所在地 佐賀県多久市北多久町大字小侍640-1

ホームページ

https://www.tenjyukai.com/

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